ORCHARD(リノベーション)

ビルディングタイプ
共同住宅・集合住宅・寮

DATA

CREDIT

  • 設計
    /360°
  • 施工
    株式会社アートボックス
  • 構造設計
    森部康司
  • 撮影
    吉田誠

敷地はアルプス山脈に囲まれた盆地に位置する長野県飯田市。飯田市では盆地の特性を活かした果樹栽培が盛んであり、建主も数年前に地元に戻り果樹農家に転身したひとりである。建主の実家では一戸建て賃貸住宅17棟を所有していた。それらは老朽化が激しく、手始めに築44年の古い8棟をリノベーションすることになり、いくつか棟数を減らしてほしいと依頼があった。 建物は仕上げ材も劣化し断熱などの性能も粗悪であることに加え、小さい面積の2LDKのプランでありながら廊下などに面積を割かれ窮屈だったため、残す棟は外部との繋がりもたせ現代の生活に合わせ改修をした。 当初は古い8棟の配置を解体計画を含め考え始めたが、近い将来、改修するであろう残りの9棟のことも視野に入れて配置計画は17棟全体でスタディをした。プライバシー、光と風、解体することによって新しくできるオープンスペースと各棟との関わり方を考慮し解体する棟と改修する棟を決定した。8棟のうち3棟を解体して、5棟を改修した。5棟のうち1棟はポリカボネートで囲い、住民たちが広場とも一体で使える半屋外のシェアキッチンとした。その他の4棟は賃貸住戸とし、各住戸には南北方向に大きな通り土間を設け、家族の集まるリビング・ダイニングとして広場とも繋がり、外部との関わり方を積極的なものにしている。敷地の一角には建物の家族が住む住宅も建設中で、広場に面して大きな土間を設け、賃貸住戸と同じフットプリントとして敷地に馴染むようにした。こうして再構築した配置計画と平面計画は、シェアキッチンをDK、広場をリビングとする外部空間も巻き込んだ新しいかたちの5LDKになったようにも捉えられる。それは人口減少が顕著な地方都市における持続可能なコミュニティのあり方と戸建住宅を群として考える可能性が見えてきた。建主の果樹園のように、この一戸建て賃貸住宅群も1棟1棟実り豊かで健康的なORCHARDになることを望んでいる。

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