荻窪の住宅

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    /360°
  • 施工
    江中建設株式会社
  • 構造設計
    寺戸巽海構造計画工房
  • 撮影
    吉田誠

道路から約14メートル引き込まれた旗竿状敷地である。配置図を見ると一目瞭然だが、ドーナッツ状の街区でちょうど穴の部分が今回の敷地。当然四方住宅に囲まれているが、北西側隣地には実家が建っていた。 建ち方を考えた。このドーナッツの穴は、それまでこの「街区の中庭」の様な存在だった筈なので、この穴を埋めることで周りの環境を壊してはいけないと思った。 北側の住宅と実家の環境を考え、幅3メートルの敷地の竿の部分をそのまま延長して、近隣への新しい庭として形を変えて用意した。また上階でも棟を分けることで、建物を部屋のスケールにまで抑えながら実家側へ開き、風と光を導きながらゆるやかに繋いでいる。 さらに少しだけ建物を地中に埋めて断面的な操作も加えた。こうする事で、もちろん近隣に対して建物の存在感が和らげられるし、実際採光的にも有利になるのだが、同時に周りの環境だけではなくこの住宅の環境も整えられるのである。半地下になった部分は地中熱の恩恵を受けて、夏は涼しく冬は暖かく過ごせる。 またここで生まれたレベル差は屋内外で多様な空間を作っている。屋内ではハッキリとレベルを変えながら各部屋が繋がっていき、いつのまにか別棟に渡っていたりなど、鍾乳洞の中を歩いて冒険しているような感覚になる。その途中急に動物の低い視点で中庭が見えたり、穴から顔を出して空を感じたりする。地面が凄く近かったり、天井が異常に低かったり、何か自分の身体スケールが伸び縮みして狂わされる感覚にもなる。 屋外ではH1500mmのデッキが地面との距離を縮め、このデッキような屋根のようなものが中庭を囲いながらレベルを変えてぐるりと回っている。『360°』では屋根は緑化してもう一つの居場所を作りながら、その存在を周りの環境に溶け込ませて消していたが、ここではデッキがレベルを変えながらいつのまにか屋根になることで、屋根の存在を希薄なものにしている。 このような配置や断面操作、さらにはスケール操作が、この建築を「街区の中庭」のような存在にできたと思っている。

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