白山の住宅(リノベーション)

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    /360°
  • 施工
    コムスタイル
  • 構造設計
    蒲池健
  • 撮影
    吉田誠
  • プロデュース
    株式会社リビタ

中古住宅をリノベーションして再販するプロジェトである。解体前に見たその現場は薄暗く風通しも悪かったので、性能や環境(構造、断熱、採光 、 通風 )を 向上させることが前提であった。さらに築30年の既存建物は建築家が設計したものでかなり個性が強く、そのキャラクター性をニュートラルにしていくことも、このプロジェクトでは必要なことだと考えた。 ある程度方針が決まってきたところで、解体後の現場を見に行くと解体前とは全く印象が異なり、使えそうなところや使えなさそうなところが見えてきた。むしろ解体後の方が魅力的な建物に感じた。それはリノベーション特有の、「既存躯体」という敷地を見ているのだと思った。新築をつくる時とは 別物の環境である 。 特に構造は想定外のことが多かったが、その荒々しい構造体は素の魅力があり、ニュートラルにするという意味でもその空気感を残したいと思った。
 そこで半地下部分に玄関を移動し、既存のトップライトの光に向かって、半地下から1階、さらには2階へとずれた吹抜けを、構造体の間を通ってねじれながら上っていく計画とした。同じ軌道を通り抜ける。その様は森の中の木々を抜ける光や風のようである。家の中央に林をつくったのだ。
 2階の部屋でも木漏れ日を享受できるように、間仕切りはガラスとしている。柱の林以外はすべ て白にし、柱は色を付けずに自然のままに残している。そうすることで家の中に林をつくったというよりも、林の中に個室(白いエリア)をつくったような感覚にもなる。 古い柱と新しい柱、傷んだ木に補修を施した新しい木材。それらはまるで陶器の金継ぎのようにも見える。金継ぎは欠けた器を直して使うという 機能的な理由だけにとどまらず、むしろ新しい価値、魅力を生んでいる。つまりリノベーションという行為自体も街の中において、過去と現在を繋ぐ金継ぎなのだと思っている。

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