エア・ガーデンハウス

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    kumo
  • 担当者
    望月大地 / 久保井聡
  • 施工
    誠和建設
  • 構造設計
    小松宏年構造設計事務所
  • 撮影
    水谷夏樹 / 青木遥香

「他者が入り込む庭のようなものを浮かべる」 名古屋市内の住宅地に建つ、夫婦と子どもが暮らす木造2階建ての小住宅。 厳しい建蔽率と北側斜線を有する地域に位置するため、平面的にも断面的にも大きさに対して制限を持つ敷地である。この限られた場所で伸びやかな居住空間を得るために、周囲の住宅からのプライバシーに配慮しつつ、外部環境を大きく取り込みたいと考えた。 まず、北側斜線を避けつつ気積を最大化するように空間を高さ方向へ引き延ばし、縦長なプロポーションの外形を立ち上げる。つぎに、本来無いはずの1階と2階の“あいだ”の境界もまた、人間がすっぽり入るH1.8mまで引き延ばし、その四周を窓で包むことで、階に属さない余白(窓の層)を建物中央に浮かべた。 基礎の立ち上がりをH1.8mまで立ち上げ、その上部に窓の層を含む木造の軸組を載せる構成とすることで、窓の層より下の空間は基礎立ち上がりに囲われつつ開放的な場所となり、一方で窓の層より上の空間は木造スケールの落ち着いた場所がつくられる。こうした環境を享受できるように、窓の層に対する位相からいくつかの床(オンルーム、インルーム、アンダールーム、サイドルーム・・・)をつくることで、生活の中で居場所を見出していくことができるのではないかと考えた。いわばこの住宅全体が窓の層を中心に据えた立体的な窓辺空間であり、一様でないまちとの距離感を楽しむことができる。 これから窓の層は趣味の道具が置かれ、植物が吊られ、嗜好のモノで溢れ、生活の中へ溶け込んでいく。植物に水やりをしたとき、背伸びをして本棚に手をかけたとき、階段を昇ったとき、日常のふとした動きひとつひとつが窓の層を介することで思いがけないまちとの出会いになる。中央に浮かぶ窓の層は、この住宅とまちをつなぐ大きな余白として立面に立ち現れ、暮らしの見えがくれがそのまままちの風景になっていく。

11