
PROJECT MEMBER
愛知県の郊外に建つ住宅。 新築にあたり建主は、SNSや雑誌などから集めた家具・照明・多種多様な仕上げ・設備機器・収納アイデア・窓周りの使い方など、住宅にまつわる大量のイメージを持っていた。そのイメージは必ずしも一貫しているわけでは無く、コンクリート打ち放しの外観写真も木貼りの外観写真もあれば、ミニマルでクールな内観写真も雑多で楽し気な内観写真もあった。便利で合理的な収納アイデアと味のあるアンティーク家具とが等価に並んでいた。 これらは、理想の暮らしに向かう要望の断片であり、竣工後も日々変化し続けるであろうと思った。そこで、それら大量のイメージの中から取捨選択するように空間をまとめあげるというよりは、様々な要素が溢れ、それらが響きあうような骨格のあり方を考えながら設計を始めた。 敷地は低層の住宅が立ち並ぶ閑静な住宅街。 付近の交差点は道路が直行しておらず、昔からの不整形な街区の形状が残るまちである。 計画敷地もその影響を受け平行四辺形の土地形状となっている。はじめのうちは平行四辺形のボリュームを検討していたが、敷地とボリュームの関係とは別に、内部の切り分け方を考える必要があるというのを不自然に感じた。まちの成り立ちと家の成り立ちが連続しているようで連続していないように感じられたのである。そこでボリュームを複数に分け、それぞれのボリュームを敷地境界線に正対させる事を考えた。 ボリュームの数は要望を考慮して7つとし、まちとの境界にむかって7部屋を建てた。各部屋の梁を目の前の敷地境界線をセットバックするようにして現し、敷地の中心付近にはまちから距離をとった余白としての中庭を設けた。街区の特徴から部屋の集まりがつくられたコートハウスである。 そして、部屋を超えた多様な領域が生まれることを期待して、中庭に接する面は全てガラスとし各部屋を様々な距離で繋げようとした。つまり部屋を部屋にひらいていった。また、3種類の内壁仕上げ(1.柱現わし 2.合板OS塗装 3.合板EP塗装)を部屋単位での統一を避けながら用いる事で、離れた部屋の壁同士の仕上げが結びつくようなあり方を考えた。 それらのことによって、自分の部屋と中庭をはさんだ向かいの部屋を同じ領域と感じ、距離の遠い部屋を隣の部屋より近くに感じられる。部屋の集まりであると同時に、様々な距離を内包した不均一なワンルームである。3種類の内壁仕上げに外壁を加えた4種類の仕上げが、CMYKによって色が作られるインクのように、場所毎に様々な彩りを作る。7部屋の数珠繋ぎという構成が消えて、たくさんの場所の集積に変わっていく。ここでは、部屋に散らばる家具や照明、雑多な小物やおもちゃも空間の要素として参加し暮らしの一部として響きあう。 部屋の外に存在するまちの構造や歴史について考え、そして、部屋の内に際限なく広がる時間の経過を伴った暮らしの可能性について考えながら設計を行った。住宅の設計としての与件を少し広い範囲で捉え、具体的につくりあげる構造や仕上げがそれらと様々な階層で結びつく。この住宅は、まちの風景と暮らしの交点としての部屋の集まりである。