アクティブな趣味を持った夫婦と子ども二人のための住宅です。 敷地は海にほど近く、袋小路になった細い道路と海に注ぐ湾曲した川に挟まれており、通り抜ける心地よい風や川の水位の満ち引きが印象的な場所でした。一方で向かいの家々を跨いだ先に幹線道路が走っており、そこからの視線も考慮する必要がありました。そこで、豊かな環境を最大限活かしながら住まい手自身がその関わり方を自由に調整できる柔軟な建築を目指しました。 東西軸を長辺としたボリュームを川に沿ってを配置し、南北それぞれに設けた大きな開口とそれに連続した外部空間を介して人・風・音が分け隔てなく通り抜ける構成を考えました。南側の大きな円形テラスは建物へのアプローチやたくさんの植物の居場所となります。隣接したサンルームは普段サーフボードやキャンプ用品を収納する納戸空間ですが、テラスとの境界に設けた半透明ポリカーボネイト製の大きな開き戸の開き具合によって、空間の用途を柔軟に変えることができます。また、この開き戸は幹線道路からの視線やサンルームへの通風・日照を調整する環境装置としても機能します。 北側のテラスは家事空間から続く縁側のような長いスペースで、洗濯物を干したり、ゆっくり川を眺めたりするためのプライベートで静的な場所としました。室内の床の大半を土間コンクリートとすることで、円形テラスとサンルームが纏う自由な空気感が室内を通り抜け川へと流れるような、シームレスな関係を実現しました。 一連の動きの中で住まい手はその時々に合った選択をし、建築もそれに呼応する。こうした有機的な関係が住まい手と環境を結びつけ、そこに棲みつく「つなぎ」となることを願っています。

メンバー

クレジット

  • 設計
    中野晋治建築研究室
  • 担当者
    中野晋治
  • 施工
    安藤工務店
  • 構造設計
    甲斐構造設計事務所
  • 撮影
    八代写真事務所

データ