都心の駅前の敷地に設ける庭が、静けさ、快適性、明るい北庭を実現する。 東京目黒区の駅前が敷地である。東側には高架線路があり、南側西側には建物が隣接する。ただ、接道側北側には駅前としては珍しい森が広がっている。その先には渋谷や、新宿の眺望がある。 建物一階はクリニック、2階と3階は二世帯住宅となっている。それぞれに3つの異なる性格の庭を設けることにした。 1階のクリニックには、門扉を入ると石畳と、落葉樹を中心にしたアプローチガーデンが出迎える。見上げると周囲の建物が一切見えない「空」。まるで平屋建てのクリニックに来たかのような感覚を狙った。来訪者に威圧感をできるだけ与えず、緊張をほどく空間となっている。 2階は祖母の居住スペースである。線路からの音や、建物からの視線を遮るため、二層分約6mの壁で囲まれた中庭を南側に設け、そこに面するようにした。中庭の外壁仕上げは凹凸のある塗装や木板張りとし、音が乱反射することで静けさが実現している。 3階が子世帯のメイン空間である。北側には森が広がり、遠景には渋谷、新宿を眺めることができる。その森を借景とし、大きな開口とテラスを設けた。電車の音と周囲の建物からの視線をカットするには、テラスを壁と庇で囲む必要があった。だが、そうすると森には自らの建物によって日影ができてしまう。そこで、南からの光をできるだけ森へ届けるよう、建物の角をR形状にした。その結果生まれた内部空間は、洞窟のような形になり、包まれた安心感を与えるものとなった。この形状によって天空率が上がるため、前面道路から建物を見上げた際の威圧感を低減させることにもつながった。
チーム
メンバー
クレジット
- 設計
- IKAWAYA建築設計
- 担当者
- 井川充司、北沢迅、今田夕稀
- 施工
- 栄港建設
- 構造設計
- yAt構造設計事務所
- 撮影
- 川辺明伸
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