高台の窓と架構

高台に建つ夫婦と子供のための住宅。 敷地は太宰府天満宮に程近く、山の中腹を切り拓いた袋状の住宅地に位置している。崖に面した東側は遠くに山々を望み、眼下には街並みが広がる眺望に恵まれた場所だった。一方で袋状の住宅地ならではの親密なコミュニティが根付いた地域だったため、近隣と良好な関係を築きながら眺望を享受できる建築のあり方を考えた。 まず、景観の独占を避けるために東西に長い箱状の建物を北側に寄せて配置し、南側を空地とすることで前面道路からの眺望を地域と共有するフットプリントを形成した。東側の大開口から遠景や自然光を引き込むように筒状のボリュームを中央に配し、コンパクトにまとめた北側の諸室群と南側の外部に張り出した構造フレームによって全体を支える構成としている。構造フレームの下は半屋外空間となっており、屋外活動の補助役であると同時に近隣との緩衝帯や日射調整の役割も果たしている。 地盤調査の結果杭が必要であったため、限られた予算を考慮して崖側の寝室部分を半地下に埋めて杭長を抑えることとした。半地下の上は1.5階のリビングとなり、1階のダイニングと間口いっぱいの階段で繋がる開放的な空間になっている。この断面操作により単調になりがちな遠景との関係が変化し、山の麓からこの小さな住宅に至るまでの起伏に富んだ地形やシークエンスが、スケールを変えて内部まで連続するような空間体験を生み出すこととなった。 恵まれた眺望や周辺環境を再解釈し建築に反映することで、この地に育まれてきた風土を体現した住宅である。

メンバー

クレジット

  • 設計
    中野晋治建築研究室
  • 担当者
    中野晋治
  • 施工
    F3Rise
  • 構造設計
    きいぷらん
  • 撮影
    八代写真事務所

データ