東京・神田に建つ、地下1階地上10階建のRC+鉄骨造のシェアオフィスである。 敷地は北側と西側に接道する角地で、道路斜線制限を考慮すると事業主が求める床面積の確保が難しいため、天空率計算を用いて「地下1~3階の基壇」と「4~10階のタワー」という構成で必要なボリュームを確保した。また、当初の与件は全フロアをシェアオフィス会員用のスペースにするものであったが、基壇部には飲食店舗やシェアキッチン、あるいは「小商いオフィス」と呼ぶ小規模店舗やショールーム等に使えるオープンなオフィス区画を配置し、一般の人々が街から直接アクセス出来る公共的なプログラムとしている。 レンタブル比向上(2以上の直通階段緩和)のために採用した屋外避難階段は、建物裏に追いやるのではなく長手ファサード側で各階のバルコニーを繋ぐように設置し、それらを日常動線化することで、シェアオフィス特有の小割化した多数の個室へのアクセスを確保した。それは回遊動線の中に「屋内外の行き来」というシークエンスの起伏を生み出し、小さな個室群と街を直接対峙させる仕組みでもある。また、各階で異なる階段の位置に反応しながらボリュームを突き出したりバルコニーを拡張したりすることで、単なる基準階の反復ではない「階毎に変わる形と機能」が積層する状況を創出した。特にバルコニーでは、所々に生まれる小さなスペースを丁寧に見つけて居場所化することで、ワーカーの様々な振る舞いをファサードに表出させ、基壇部の公共的なプログラムと共に、閉じた箱になりがちなオフィスというビルディングタイプを街に開くことを意識した。 シェアという概念が一般的になって久しいが、会員という名の特定コミュニティだけに閉じたシェアではなく、それがもう少し公共と混ざり繋がるような風景の在り方を考えていたように思う。 大野力 / sinato