都市の中のオアシスのような場をつくりたいと考えました。8MスパンのRC造の建物の特徴を生かして、自然の中にいるような感覚に浸れる心地よい空間を生み出したいと考えました。ビジネスや観光などでたくさんの人が行き交う東京の中心であっても、一歩室内に入り込めば、伸びやかに広がる草原のような場が展開します。 プランの制約上、リビングの真ん中に柱が出てくることを免れませんでしたが、柱の周りを半円形のリブウォールで囲み梁を避けてだんだんと天井の高さを高くしていくことで、白い巨樹の幹に見立ててました。柱と段上に織り上げられた天井は、鍾乳洞のようでもあり、白く柔らかい雲のようでもあります。曇り空は、晴天の日に比べ、雲により天空光が拡散するため、全体的な照度が高くなりますが、太陽を直視することはないためまぶしくありません。部屋全体が居心地の良い明るい空気に包まれています。白く柔らかい雲に包まれているかのような約80m2の広いリビングルームは中央の柱と天井の高さの差異により、多様な質感の場を形成しています。 既存の黒いサッシを踏襲し、建具と洗面カウンターなどの造作家具には、黒いフレームとマットなグレーを採用し、モノトーンのフレームとボリュームの連続体により、機能的に必要な要素をオブジェに見立てたスタイリッシュなインテリアとしました。白い壁中にも凹凸のある部分があり、粘土で塗り固めた彫刻のような空間の中に、モルタルや石、木など、天然素材に近いテクスチャを用いて、奥行きと質感を与えました。 アイランドキッチンは大理石調のテクスチャを採用し、設備ではなくインテリアオブジェとして見せることを意識しました。また、ダイニングテーブルと一体化させ、キッチンからリビングを見渡せる構成としました。ダイニングテーブルは非整形な曲線形状を採用することで、いろんな方向からテーブルを囲むことができ、座る人数を限定せず、来客が来ても対応しやすいデザインとしました。 坂の多い地形の場所に建つマンションの1室は、建物の背後の地上階から階段を解することなくアプローチできますが、坂の麓側は4階の高さの景色が伺えます。夜はリビングからテラス越しに街の夜景を望めます。カーテンを閉じると、カーテンボックス内に設けられた間接照明により、昼間の様相とは異なる明るい光に包まれた空間となります。 サービスルームの窓際のカーテンのレールは、リビングへの扉側にも周っており、窓際のレースのカーテンは、ガラスの引き戸越しのリビングからサービスルームへの視線を遮るためのカーテンにも代替が可能です。 サービスルーム(書斎)と主寝室に採用した壁紙は、ゴッホが甥が生まれたときに描いた作品をもとにデザインされたものです。落ち着いた色合いの中にもどこか温かみの感じられる、長く愛着を持って過ごしてもらえる場になってほしいと思います。 movie https://www.youtube.com/watch?v=rU0dcUmv6xA&t=15s

メンバー

クレジット

  • 撮影
    Vincent Hecht / 新井達也
  • 設計
    ayami takada architects
  • 施工
    APS

データ