近年開発が進む駅前から少し離れた古い住宅群が数多く残っているエリアに建つ、夫婦+子供2人のための住宅。 敷地は東西方向に細長く南面に隣家が迫っているため、日照をいかに確保するかが大きな課題となった。 接道面の間口が約 7m で奥側では 10m と台形状に広がっている。 この 3mを余剰と捉えボリューム検討を行った。1,2 階でボリュームをそれぞれ敷地形状に添わせるように ずらすことで、南面での隣地からのセットバックをつくりハイサイドライトを持った大きな吹き抜け空間を設けた。 各室の採光をそれぞれに考えプランを組み立てるのではなく、最大限明るい気積を確保する外壁をまず立ち上げ、その気積に面して各機能が展開していくことを考えた。 同時に外部側で生まれる軒下空間では、玄関ポーチ、車の積荷、勝手口の庇など雨よけを必要とする機能がずるずると繋がっていく。 更地の時点では日陰の範囲が半分を占め陰湿な空気を感じる土地であったが、建築が建ち上がることで内部空間だけでなく、周辺からの見えとしても明るい場所へと転換させることが出来たと感じている。 郊外でありながら隣家が建て詰まっている状況において、古くからある住宅地に異物を持ち 込むことに違和感を感じた。建主が全く別の地域から移り住む際に、建築がコミュニケーショ ンの弊害になってはならないと思うし、土地に根ざした生活のきっかけになるべきだと考え る。周囲を見渡すと 4~5 寸の瓦屋根、漆喰壁と板金を組み合わせた外壁の形式を取っている 家が多いことが分かった。また、設計を進める中で施主が外からの視線を嫌うことが分かり、 周囲に対する開放性を開口以外でつくることが求められた。 そこで、1,2 階のボリュームで葺き方を変えた板金の外壁とし、前面道路側に開口がない切妻のボリュームが浮いているような建ち方とした。これから周囲の建て替えが進むことが予想 されるなかで、要素を抽出しながらも周囲と比較すると違和感を感じるような建ち方は、地域全体の家に対す見方を変える存在となり、駅前で見られる無自覚の暴力性によるちぐはぐな状況から距離を取る手段として有効ではないかと考えた。屋根が連なる風景が次世代の原風景になっていくことを期待している。
クレジット
- 撮影
- 山内紀人
- 設計
- tombow architects / sunaba
- 担当者
- 小林佑輔 / 長谷川祥
- 施工
- 渡辺建工
- 構造設計
- oha
- 不動産
- 創造系不動産