住宅でありながら美術館のような建築が求められたことから、HOUSEUMというコンセプトが生まれた。敷地は駅近の都市部にあり、マンションや3階建の住宅に囲まれている。敷地以南に関してはほとんどの建物が、日影計算が不要となる高さ10m以下で建築されている事と、周囲から覗かれず生活感も出したくないクライアントのご要望を踏まえ、様々な角度から高さ10mの視点で内部が見えないよう断面を検討し、カーテンの要らないコートハウスとした。敷地は準防火地域のため、主要な窓が延焼ラインから外れるように中庭を設け、中庭を中心として居住空間を配置。広い玄関から細く薄暗い廊下を抜けた先に、外部からは想像出来ない空と光に包まれた開放的な空間へ続くシークエンスを用意した。道路側は生活感が出ないよう外構も含めて水平ラインの綺麗な壁を残し、樹木のキャンバスに。内部空間はノイズとなる扉の枠や巾木等が目立たないようディティールまでこだわり抜いて設計した。一般的なの手順としては、間取り→外装→内装→ディティールという流れで設計を進めるものの、この家の大面積を占める床、壁のタイルの割付が決まった瞬間に、スイッチコンセントや照明の高さ、壁の位置や厚み、窓の大きさ等、先に決めたはずのエレメントたちが「このままで良いのか?」とざわつき始める。一種のコードとも考えられるタイルの目地ラインに乗りたい、そんな声に耳を傾けながら、ディティール→内装→外装→間取りの逆サイクルを起こし、全体の統合を試みた。日々移ろう光と影が空間に豊かな表情を与えている。周囲の喧噪を忘れ静謐な空間と暮らすHOUSEUMが完成した。