
敷地は秋田市の少し郊外、小さな土手のある川沿いに位置しています。土手には大きな桜の木が植えられていて、春には素晴らしい景色を届けてくれることが、容易に想像できました。この景色を享受しない手はありません。 少し上がっている土手から1階は見下ろされる関係で、2階からの方が連続する桜の木が見え、何と言っても桜の木に手が届かんばかりの距離感になります。 そこでリビング、ダイニング、キッチンは2階に計画することにしました。キッチンで作業してる時も、ダイニングで朝ご飯をとる時も、リビングでくつろいでいる時もこの景色を感じながら過ごせるのです。この景色は完全にこの住宅の一部になりました。 土手は少し上がっている分、2階からの距離も近いのでプライバシーの確保を考えなくてはいけません。そこで1階の屋根を少しだけ上にあげました。つまりこの操作で2階の床が1階の屋根のレベルよりも下がって、屋根の下に潜るような断面になります。こうすることで2階のプライバシーを守り、篭ったような感覚にもなります。 またクライアントの生活スタイルから読み取って土間を2箇所計画しました。この土間は趣味のモノだったり、秋田という土地柄冬の雪対策の道具など、生活に欠かせないモノたちの部屋になります。自転車や植物や道具などいろいろなモノたちの部屋です。それらは外に近いモノたちで、この部屋も外に近い空間がいいと思いました。壁をポリカーボネートにすることで、外と内との間のような中間領域を提案することができました。 この住宅は景色という感性に訴えることと、機能という実利を叶えることを同時に設計して完成しました。 冬には2階の篭った部屋から、目の前の川で越冬する白鳥も目にすることができます。