補足資料
PROJECT MEMBER
長く建築金物や店舗什器を手掛けてきた株式会社徳山工業社が、2002年に不動産業へ事業を拡大するにあたり設立した有限会社フェニックス。当時、不景気(平成不況)により周りの企業がどんどん倒産していくなか、「何度でも蘇られるように」と願いを込めて“フェニックス(死んでも蘇る伝説上の鳥、不死鳥)”と命名された。 このフェニックスという社名と新たな地で更に羽ばたく企業でありたいという想いから生まれたのが流線形のメインモチーフ。鳥の翼のなかでも前に進む機能をもつ「初列風切(しょれつかざぎり)」という羽と、鳥が上昇する際に羽の間に流れる空気の流れからインスピレーションを受けたデザインは、会社の顔でもあるエントランスの造形にも採用している。 『エントランス天井造作』 エントランスの吹き抜けを背景に翼が広がる姿を表現した天井造作は、オブジェではなく空間と調和したアートそのもの。翼のカラーはフェニックスを連想させるゴールドを用い、ブラケット照明や手すりにも同系色を採用し連動させることで空間と翼の融合を目指した。 翼の形状は、羽間に流れる風のモーションを6パターンにグラフィック化。エントランスの吹き抜けから吹き上がるような3D形状を空間に組み込んだ時、どのようにしたら空間の一体感が生まれるか、またそれぞれの曲線に仕込んだ照明でどのように翼が強調されて見えるか、壁際のカットラインはどのようにするか、といった課題を抱えていたため多くのモックアップ制作とテストを繰り返し、ディティールの検討を重ねていった。 『エントランスのガラス手すり』 吹き抜けの手すりには3枚の合わせガラスを採用し、奥行きを演出。サンドブラスト加工を施したエッチングガラスで羽モチーフの陰影を美しく見せるとともに社名部分には金箔を用いるなど、多層構造を生かしたデザインが特徴。 『VIPエリア』 VIPエリアのデザインについて、クライアントから求められたのは「ホスピタリティ溢れる内装デザイン」。来訪者がVIPミーティングやVIPダイニングに向かう動線で特別感を得られるような、期待を超える空間の計画を目指した。エントランスやVIPコリドー(廊下)では、空間への圧倒的な没入感を作ることでオフィスビルにいることを忘れさせ、案内されたVIPルームでは優雅な空間の中で大阪のメインストリートや街並みを眼下にのぞめる、そんな特別な空間を生み出した。 『コワーキングスペース』 執務エリアとは別にコワーキングスペースを用意。イベントや交流会、全社集会を可能にするための広さを確保し、可動しやすい什器を選定することでフレキシブルな空間に。オープンで柔軟な環境をつくったことで、従業員の自由な発想や気軽な交流を促進させている。 『石材の使用』 フェニックス社が建物を取り扱う会社であることから、土台や建材として想起される「石」「木」を各所に取り入れている。なかでも石材は大きさ、使い方にこだわった部分。各会議室名にはAからJまでのアルファベットを割り当て、それらの頭文字から始まる大理石をブラケットサインに採用した(A:Argosなど)。真鍮のフレームと大理石の組み合わせが華やかで上品なデザインとなっている。エントランスには大きな御影石、共有部にも大理石を採用。 『オフィスの生産性について』 オフィス全体に対する要望として、生産性を上げられるオフィスにしたいという抽象度の高いリクエストもあった。企業の風土や文化を深く知るなかで解は一つではないと考え、今回の移転プロジェクトを総合的に捉えるために、ダイアグラムを作成。ダイアグラムを指標として、プロジェクトにおいて本当に必要な要素は何か、解決すべきことは何か常に見極められるようにした。