
PROJECT MEMBER
東京都庁のほど近く、十二社通り沿いに面して建つ10層のテナントオフィスビルである。 プロジェクトが開始してほどなくコロナ禍が始まり、働く場の在り方が改めて問われた中、特定の場所に依拠した働き方を想定するのであれば、その場でしか得られない魅力を持つ必要があるのではと考えた。 ここでは、敷地奥側には基準階を反復した整形無柱のボックスを汎用性の高い執務スペースとして配置した上で、その余剰的な場となって都市との間で中間領域となるような「ファサード空間」を接道側に設けた構成としている。 ファサード空間はテナント毎の活動の差異・時間的な差異・建築エレメントの変化といった、多角的な差異が重奏する場として捉えている。 建築の形態や素材の特異性ではなく、差異の重奏が生み出す振幅によって、街並みの中に魅力を付与することが出来るのではないかと考えた。 - クリニックの内装デザイン エレベーターを出た先には、街に向けて大きく開かれた奥行2m程のガラスで囲われた空間が広がる。 街に対して大きく開かれたこの開放的な空間に、待合を配置した。 待合は、必ずしも「待つ」という目的に縛られる場所ではない。「待つ」時間を利用して、本を読んだりTVを見たりと思い思いに自由に時間を過ごす場所であり、公園のような場とも言える。 そして、待合が配置される空間は、その奥行の浅さから、3階の高さにありながらも通りから内部の様子がうかがえ、待合側からも都市の雑踏を身近に感じることができ、都市とインテリアの両方に帰属した雰囲気を持つ。 インテリアとしては、この両義的な雰囲気を残しつつ、時間帯によるガラスの透過性の変化によってその帰属が揺らぐような在り方を意図した。