
補足資料







半外部と内部の気積比1:1の住宅である。 敷地が広い地方の住宅では外部環境と共生することが必然となるが、住宅の高性能化が進む現在、外部と親密に繋がる大きな窓を設けることは困難になりつつある。この状況下にある住宅事情を肯定しながら外部との豊かな関係を再考したい。 敷地は、農業を生業とし母屋と下屋(半外部)、納屋といった要素で構成されている多くの民家が建つ農業地帯と、倉庫や工場などの工業地帯の狭間に位置し、前面道路は近隣農業高校の通学路である。多種多様な街並みの中で、農業地帯と工業地帯、2種の性格を引き受ける屋根を架け、母屋と下屋の関係を反転しながら半外部空間を内部空間との気積比1:1で設けた。 ヴォールト屋根のヴォリュームを母屋に、片流れ屋根のヴォリュームを下屋に読み換え、双方を噛み合わせ、母屋は納屋を内包した半外部とし、下屋は純粋な内部とした。下屋に配置したリビングダイニングキッチン、玄関、寝室には同様に母屋が被さっており、噛み合う境界部分は採光、通風換気の装置となる。気積の半分を割いた母屋は夏は大きな軒下、冬は温室であり、中間期は室内の延長として利用される。母屋(内部)、下屋(半外部)といった一般的な形式を反転させ母屋(半外部)、下屋(内部)とすることで諸室のヒエラルキーを解体し、気積の大きな半外部空間は田舎暮らしに必要なさまざまな道具や、行為を受け入れる場所となり、気積の小さな内部空間はエネルギー効率のよい高気密高断熱な温熱環境となる。 外部との親和性がある暮らしは田舎暮らしにおいて当たり前のことであったが、高性能要求が高まる現代においては、それは当たり前でなくなりつつある。豊かで時に過酷な外部との暮らしを取り戻すために、庭や畑と暮らすための道具に囲まれながら、四季を通じてダイナミックに変化する自然を感じ取ることができる半外部空間の余剰は、外部との暮らしを置き去りにしてしまう現代の住宅に必要な、大らかさであると思う。 (河嶋正樹)