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〈素材のあるままをデザインする〉 無印良品の店舗設計では、創業以来、天然素材「木・金・土」(木材、鉄、土や石)をベースとし、「引き算のデザイン」を気品理念に、無駄な装飾を排除し、直線を基調にした極限までシンプルな箱型が基本コンセプトとなっている。天然素材の経年劣化が、素朴さ、味わいとなるように、店舗自体が月日を重ね、各地域のコミュニティセンターとしての役割を担い、各地域の課題や価値観を共有し、地域へ根差したサービスの実現を目指している。 日田木造店舗では、メインファサードの東西で約1mの高低差がある事から、建物足元のコンクリート壁を水上側で約 400 ㎜、水下側で約 1400 ㎜立ち上げ、その上部に地元日田産のスギ板を凹凸の表情を持たせて計画し、横幅約 84mのファサードにおいて木材の壁を際立たせている 〈「木の家」から非住宅建築への展開〉 MUJI HOUSE では、2004 年に「木の家」を発売後、一貫して SE 構法を採用している。現在に至るまで約 3,000 戸を供給しているが、大地震による倒壊件数はゼロである。SE 構法は木材同士を金物で剛接合する木造ラーメン構造であり、耐震性を確保しつつ自由度の高い空間を構成できる。 日田木造店舗においても SE 構法を採用し、燃えしろ(35mm)設計とすることで主構造の木を現しとした。柱(180×500mm)、梁(180×500mm)を2本重ね合わせることで6mグリッド、延床面積2,000㎡を超える店舗を実現した。 〈大型木造店舗の普及に向けた取り組み〉 良品計画では、ESG 重要課題として「資源循環型・自然共生型・持続可能な社会の実現」を掲げている。具体的な課題のひとつとして、日本の森林に着目し、2023 年に農林水産省と「木材利用拡大に関する建築物木材利用促進協定」を締結し、5 年間で計 10,000 ㎥を目安とした合法伐採木材の利用に挑戦している。(使用した木材量:377 ㎥)「植林→育成→間伐材利用→管理→適正伐採→適正使用」という森林サイクルを実現するため、間伐材を使った商品の開発から、木造店舗での適正伐採、適正使用まで、今後も森林や林業と正面から向き合っていく上で、無印良品木造店舗の拡充を推進している。 日田木造店舗では、『ZEB』を取得した。外壁、屋根には高性能グラスウール断熱材 16K、サッシには Low-E 複層ガラス、高効率型マルチエアコン(平均 COP4.22)、高効率DC型モーター全熱交換器等を採用し省エネ化を図ると同時に、太陽光パネル 344kWを搭載し、これらを独自の BEMS で監視出来るシステムを構築した。設計上、年間使用する消費電力量の約 5 割を自然エネルギーで補う設計となっている。 また、LCA 算定ツール「One Click LCA」を使って、同規模の無印良品鉄骨造店舗と比較した結果、木造化することで、資材製造段階において約 44%、ライフサイクル全体(運用段階は除く)においても、約35%CO2 排出量を削減出来ることが分かった。 〈災害時の被災者支援〉 高い耐震性を保持する空間と、エネルギーを創出できる本建築物は、被災者支援としての機能を備えています。災害時も想定した建築設計とし、「充電ステーション」や「マンホールトイレ」、「かまどベンチ」を設置し、あらゆる状況下で地域に役立つ店舗を目指しています。