江戸川のたて穴

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 撮影
    岡本 賢 / 山口 仁之
  • 設計
    山口 仁之
  • 構造設計
    ouvi/木佐美 慶太

■「まちの資産」を活用 葬儀場の用途で使われていた建物を、5人家族のための専用住宅へコンバージョンした計画。職住近接と広いLDKが望まれた中で、近隣の既存の建物を「まちの資産」と捉え、改修により実現させた。 住宅へと見直しを計る上で、耐震性や快適な温熱環境、 省エネルギー性を確保しつつ、 自然や開放感が感じられたり、物理的な広さだけでなく様々な居場所があることで、居心地の良い空間となるよう施主と共に建物全体をどう使い倒すかを共想し、周囲を隣地に囲まれた状況と、防犯性やプライバシーへの配慮から、屋内に外のような空間をつくることとした。 ■外のような空間(たて穴とインナーテラス) 既存の物理的な広さ、階高設定、来客を迎えることを考慮し、最も大きな気積をもつ1階部分をLDKとしたが、屋根にトップライトを設け、既存の床を抜き、1階まで吹抜でつないだことで日中の光の変化を感じることができる。 つなぐための要素として2階部分をガラス床、ガラス階段としている。 また交通量のある道路から引きをとることと合わせて、外のように使えるインナーテラスとした。防水性も確保したため、プールを出して遊ぶこともできる。 ■グレーと白 外の空間は白、内の空間はグレーを基調に単純な色分けとした。階段下を読書スペースとしたり、通路としては少々広めな3階のホールにはベンチを置けば公園のようなスペースとする等、白とグレーの空間を行き来しながら、1階から3階までひとつながりとなる居場所の多い住宅とした。 ■ 構造について(減築による耐震補強の有効性) 既存の床や屋根を一部撤去し、各階を貫く大きなボイドを設け、階段やトップライトを配置しているが、建物の耐震性能を落とさないよう床構面の水平ブレースを一部撤去し、ボイド範囲に応じて小梁と水平ブレースを新設している。 床や屋根を一部撤去することで水平構面の連続性が分断されるため、地震力の伝達性能に対しての検討が重要となる。構造体はボイドを横切る各階の大梁を残し、ボイドの位置に配慮することで一体性を確保している。解析プログラムを用いて改修後の構造モデルを作成し、分断された水平構面の間で地震力の伝達が行われる場合、残された大梁と水平構面によって軸力とせん断力の伝達が可能であることを確認した。 また改修の前後で用途が葬儀場(集会所)から住宅に変わることで、原設計時より積載荷重が減少し、改修後の構造体への負荷が軽減されている。 結果的に建物重量は2割程度減少し、新たな補強部材を付け加えることなく耐震性能を向上させることができ、減築による耐震補強の有効性を実証できた。

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