ASD KonneKt

ビルディングタイプ
その他商業施設
0
11
日本 愛媛県

補足資料

アイソメ
図面
平面図
図面

DATA

CREDIT

  • 撮影
    辻 真悟(CHIASMA FACTORY)
  • 設計
    株式会社CHIASMA FACTORY一級建築士事務所 / 株式会社ヨハクアーキテクツ一級建築士事務所
  • 担当者
    辻 真悟(CHIASMA FACTORY) / 綱島 洋平(ヨハクアーキテクツ)
  • 施工
    (株)富士造型
  • プロジェクト種別
    新築

松山市郊外に位置する「ASD KonneKt」(※現在は名称が変更されている)は、地域で活動する建築関連事業者及びそのユーザーを主な対象とする同士及びそのユーザーの間により直接的でリアルなコミュニケーションを生み出すハブ施設として企画された。主な用途としてはいわゆるシェア施設(シェアショールーム+シェアオフィス+シェアファクトリー)であるが、コロナ禍以降各地で大量に出現したシェア施設の中でも、特定の業界に特化したものとして計画されたものは(少なくともその計画着手時点においては)かなり珍しいものであった。 コンテナを組み合わせたような鉄骨造2階建の建物にはショールーム、カフェ、オフィス、工房を想定した大小のスペースが散りばめられ、それらを立体的な回遊動線で結ぶような空間構成となっている。中心に設けられた小さな中庭はこれらの空間を視覚的に結びつける結節点として全体を統合するとともに、内部空間の各部に自然光を取り込んで快適な環境を生む。この中庭の存在によって、全体的にインダストリアルな意匠でありながら工場的な暗さを感じさせない開放感に繋がっている。 当初の計画では「キャンプ場のようにアドホックで柔軟性を感じさせる建築」「そこから新しいものが生まれてくる〈現場〉をイメージさせる工業的な雰囲気」といったコンセプトから、海洋コンテナを組合せて建設するつもりであった。しかし、規格品コンテナでこの空間構成を実現しようとすると国内では建築基準法上の対応とイレギュラーな部分の加工にコストがかかりすぎて規格品を転用するメリットがなく、加えてモジュールの幅及び高さ寸法(W約2.4m×H2.6m)がイメージする空間に対してやや小さすぎるといったことからデメリットの方が多いと判断し、設計事務所のパートナーである地域の鉄工所と協働でコンテナを模したオリジナルのスチールパネル(最大約)を一から製作。実寸法は規格コンテナと異なるが、プロポーションやディテール、配色等を慎重に設計することで、全体として実際のコンテナを少し崩して積み上げたような、当初のコンセプトに沿った外観を実現した。コンテナを整然と積み上げないことによって、大きなおもちゃ箱のようなワクワク感と空間の流動的な印象も生まれている。 コロナ禍以降に生じた諸々の事情によって本施設は名称を変えてより一般的な複合店舗建物として利用されることとなったが、地方都市の市街地においては突出しているともいえるその特徴的な外観や空間構成によって地域のランドマークとしての存在感を確立している。一方で、このプロジェクトで生まれたソフト面のコンセプト(文化的”辺境”である地方都市において、地域の専門家とユーザーを巻き込んだ建築・デザインコミュニティのハブとなる場所)が結果的に中途半端に終ってしてしまったことには、設計より手前のコンセプトメイクから参加していただけに心残りもある。 だが、建物の完成=コンセプトの終わりではない。拠点の半分を東京から愛媛に移して5年が経ったいま、地方都市だからこそ必要で、かつ地方都市だからこそ可能であるようなデザインコミュニティとその拠点となる場所のあり方があるはずだという思いはますます強くなっている。このプロジェクトで道半ばに終わった構想をさらにブラッシュアップし、別の機会・場所でその実現に挑戦できればと願っている。

物件所在地