CREDIT
- 撮影
- 淺川 敏
- 設計
- NASCA
- 担当者
- 古谷誠章 / 桔川卓也 / 狩野広行 / 鹿野安司 / 山田章人
- 施工
- 建築:松尾・中島・髙木建設共同企業体 / 機械:九電工・橋口管工社 建設共同企業体 / 電気:九電工・岡田電機 建設共同企業体 / 舞台機構:サンケン・エンジニアリング / 舞台照明:パナソニックEWエンジニアリング / 舞台音響:ヤマハサウンドシステム
- 構造設計
- <設計> オーク構造設計 / 新谷眞人 花川太地(元所員) / <監理> OAK plus / 花川太地 足立徹郎
- 機械設備設計
- プランディー / 中島直哉 柳田薫
- 電気設備設計
- プランディー / 岩本信一 岩元亮
- 音響計画
- 永田音響設計 / 福地智子 酒巻文彰
- 劇場コンサルタント
- シアターワークショップ / 伊東正示 小林徹也 古川茉弥
- 防災計画
- 明野設備研究所 / 土屋伸一
- サイン計画
- テツシンデザイン / 先崎哲進 山本将也
- 照明計画
- ModuleX / 遠矢亜美 坪拓斗
佐賀県鹿島市は有明海に面し、多良山系からの豊富な水が敷地北側の中川などを流れている。プロポーザル応募前に元の市民会館を見に行った時、たまたま地元の中学生たちのサマーコンサートに遭遇した。出演者たちが演奏後に玄関前で観客を見送る姿が印象的で、新しいホールに表も裏もなく建築そのものが、人を出迎え、見送る大きな舞台となるといいと考えた。建築の外貌は、人と建築を引き合わす重要なインターフェイスであると考え、敷地から南東の3kmほどの肥前浜宿に残る白漆喰で仕上げられた優美な曲面の軒の意匠を、この土地を象徴するモチーフとして、ホールの軒周りのデザインに採り入れた。 ホールの客席は延べ750席、防音間仕切りを開放すれば、舞台は下手側袖舞台から脇花道ともなるスペースまでが連続して、ホワイエまでも一体化できる舞台を実現している。これにより客席の下手側から主舞台にかけて空間が連続し、客席は「もみあげ席」を介して二階席にまで繋がっており、客席と舞台とが継ぎ目なく融合するよう工夫した。ホール内部ではRC躯体そのものが音響反射性能を備えており、フライタワーや吊り下げ型の反射板等を設けず、演劇時には吊り幕によるプロセニアムを形成する。これからの住民使いを主体とする地方公共ホールのモデルの進化形を提示したいと考えた。 これらの試みは地域の子どもや住民が、自分たちの文化創造のために日常的に利用することを主目的としている。客席にいた人が次の出演者となって舞台に上がり、再び客席に戻るという、人々が往還する構造である。ホワイエからも自然光が入り、九角形の高窓からも採光ができる。楽屋、練習室などホール機能に加えて、館内を周回するホワイエの随所に郷土資料の展示がなされている。開館中は自由に滞在できるほか、館の外周を巡るデッキやスロープからの出入りも可能な構成となっている。旧市民会館時代にはやや閉鎖的であり、薄暗かった中川沿いの外構も開放的なものにして、文字通り裏のないホールが実現された。