補足資料
PROJECT MEMBER
これは大地から切り離された上空の間で現代美術を日常の中で楽しむ住まいである。高層の敷地においてプライバシーという近傍の建物からの他律的な与条件はない。ただあるのは遥か遠くまで見渡せる山々と眼下に広がる町並みなど都市の様相を俯瞰できることである。つまり刻々と変化する陽光や風など自然環境に寄り添いながら共生する浮遊した大地が今回の計画地といえる。そしてクライアントの嗜好する現代美術のなかでも‘もの派’と‘具体’を軸とした作品ひとつひとつを居場所に応じて計画するギャラリー的住まいの空間を目指した。 具体的には画一的に積層された10m×18mの平面に対して最上階では対角方向へPCのポストテンションによって5m跳ね出した浮遊するボリュームを貫入させた。それは高層建築が集積する都市部において新たなスカイラインを描くことを意図した。さらに上層部2層の中心部に穿たれたヴォイドを軸に回遊性を持たせた異なる5つのフロアレヴェルが立体的に交じり合う構成としている。よって下層のプライベートの領域から上層階のパブリックな居場所へグラデーショナルに陽光が変化していくものとなっている。 高層建築における柱・梁の躍動的スケールの構造架構をしなやかに受けいれながら、アート作品と共に木々や水などの自然と共生する空間である。遠景から近景まで天空の移ろいを感じながら豊かな日常を過ごすことができる新たな高層住宅の試みである。
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