蔵戸の家

ビルディングタイプ
共同住宅・集合住宅・寮

DATA

CREDIT

  • 撮影
    広松美佐江/鋭景撮影
  • 設計
    堤由匡建築設計工作室
  • 担当者
    堤由匡
  • 施工
    リフォームキュー

東京都内のマンションのスケルトンリノベーション。施主の要望の中でも特に特徴的だったのが、重厚な骨董建具を活かした空間作りであった。日本の伝統的な蔵に使用されていた蔵戸は、貴重品を守るため堅牢な木材で作られている。今回のプロジェクトでは、異なるデザインの骨董の蔵戸を4枚探し出し、新たな開口部に合わせて丁寧に修復を施した。焼けたものや分厚い塗装が施されたものなど色味がバラバラであったため、一度塗装をすべて剥がし、杉、檜、欅などの美しい無垢材の木目を蘇らせた。また、骨董の貴重なダイヤガラスを嵌め込み、デザインのアクセントとしている。  平面計画は、小さな寝室2部屋を持つ2LDKをゆったりとした1LDKへ変更した。寝室にはガラス張りの開放的な浴室を設け、大きなLDKは和室と襖で仕切られる柔軟な構成とした。浴室は特注のユニットバスを採用し、檜のルーバー壁、檜浴槽、十和田石の床と腰壁を組み合わせ、温泉旅館のような風情を作り、浴槽に浸かりながら、寝室越しに東京の夜景を楽しめる設計となっている。また、トイレには外が見える小窓を設け、どこにいても自然光と景色を感じられるよう配慮した。 仕上げには、エコで身体に優しい自然素材を採用した。チークのフローリング、オーク突板、火山灰を主成分とする薩摩中霧島壁、ワラスサの土壁など、多彩な素材を用いている。和室の壁には藍染のグラデーションを施した泡和紙を張り、窓外に広がる川や海の風景と呼応させた。 キッチンのバックパネルには、小さく分割された框扉を用い、蔵戸の格子組と連続性を持たせたデザインを採用した。新旧が見事に調和し、空間に独特の品格を与えている。伝統と現代の美を融合し、住む人が日本の文化や風景を日常の中で感じられる空間を目指したリノベーションである。