
瀬戸内海エリアは「多島美」と呼ばれる世界有数の景観を有するが、現状は魅力的な観光コンテンツと周遊ルートが未整備なため、国内外の観光客の訪問先が特定の地域に偏って集中している。そこで、この課題解決と地域活性化を目指して、JR西日本、瀬戸内海汽船、国土交通省中国運輸局の3者で瀬戸内エリアの海事観光の振興に向けた連携協定を結び、観光コンテンツ開発や、MaaS導入の実証実験、地産品の発掘発信など新しい取り組みを始めた。本船導入はこの取組の目玉で、これまで日本にほぼ前例がない、国内外からの瀬戸内の島嶼部観光を主眼にした設備と性能を備えた高速クルーザーであるとともに、広島港と三原港を東西に結ぶ新しい観光航路を開設し、JR新型観光列車やアクセスバス、サイクリングと連携することで、新たな周遊ルートを創出する。加えて、地域自治体や観光事業者と連携した着地の観光開発も用意し、従来にない新しい瀬戸内を提案する。 本船の乗客にとって一番大事な価値は、瀬戸内海の景色だ。ただし、島嶼部の中小の港にも寄港できる全長の制約、高速性能ゆえの重量制限、定員約90名が採算上の条件とされたことから、平面プランは断面3-4-3の配列になり、中央部の座席からは景色を望むことが難しくなる。そこで、窓側席の背もたれを大幅に低くし、かつ向きを3度ほど窓側に振ることで、船体中央部からも景色をかなり感じられるように工夫した。軽量化のためリクライニング機構を排したソファ席を開発。限られた船内ながら様々なお客様に対応するため、グループ向け座席やボックス座席、ソファや案内カウンター、前方眺望・多言語案内用スクリーンを具備。揺れが少なく観光に適した双胴船とし、高速航行中でも自由に船内を歩き回れるため、より視界が広がる。2階へは車椅子対応のバリアフリー設備を備え、半屋外の暴露デッキにも様々なベンチを配し、スピード感あふれる景色を楽しめる。