
農村の自動車整備工場を改装したカフェとギャラリーです。店主は広告デザイン会社を経営しておりデザインの体験と思想を伝える場にしたいとの思いがありました。そこで店主の社名「INtoOUT」から発想し、内と外・入口と出口・過去と未来などを空間のテーマとしました。 INとOUTの間にあるもの、それは扉や窓です。その開閉により体験や機能を生みたいと考えました。扉や窓は空気や人が出入りするもの。一方で意識の区切りや人と風景を繋ぐものでもあると思います。扉や窓が新しい世界の入口として象徴的に存在する。農村とデザインという異質な関係でも実体験により誰もが楽しめると考えました。 軒先には鋼管と壁を立て室内を広く確保しました。山や桜並木の風景を窓が切り取ります。小さな窓は採光と視覚効果により、人々に内外の関係性を意識させます。 カフェでは鋼管を軸に扉が回転します。様々に空間のボリュームと余白を変化させます。扉を回転させ好きな居場所を見つけて欲しいと思います。小さな窓は車窓であり、回転扉は自動車のシルエットをイメージしたもの。昔、修理のため出入りした自家用車や農業車。その記憶を残像として表しています。 ギャラリーでも扉の開閉が空間領域を変化させます。扉は商品や展示に応じた可動間仕切りであり、導線であり、敷居を跨ぐことで意識の区切りをうみます。 工場の躯体や傷は極力覆い隠さず、引き立てるように新規をインストールすること。それにより過去は否定されず、歴史や物語をつなぐことができると考えます。 扉や窓が繋ぐもの。それは中と外、人と物、昔と今、農村とデザイン…。その行き来を楽しめる場所になったと思います。
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