日頃から、建築現場に現れる職人のハイエースを見るのが好きだ。乗用車として使われているピカピカの車とは違って、内部に工具がぴたりと納まる棚が組まれていたり、メタルメッシュにフックがぶら下がっていたりと、その職人ならではの合理性や人間性のようなものを感じられる。何より、労働と生活とが一体となったスタイルにエネルギーや魅力を感じるのだと思う。 電気工事を生業とする建て主の為の、職住一体空間の計画である。周辺は畑や竹林などが広がるのどかな場所である。計画敷地は母屋が2軒建ち、更にそれらに付属する小屋(勉強小屋・農機具小屋)が建っている。建て主からの要望を整理すると、従業員や近隣住人など家族以外の人が気楽に集う事ができて、一般的な住宅の家具よりも大きなスケールの収納を備える必要性があった。そこで、居室の横に、予算の許す限り大きな土間空間を見慣れた素材の組み合わせで作る計画とした。 具体的に、構造躯体はプレメッキの角パイプ(□-50×50×2.3)を組柱とし、棚板を柱間に自由に追加できるようにした。外装材の下地は、スギの長尺の野地板を中間梁にビス打ちし、無塗装で室内に現して使用している。耐力壁となる箇所は、ブレースの代わりに、ワイヤーメッシュを使用し、採光用の窓はこのワイヤーメッシュにポリカーボネートを引っ掛けて留めつけた。出入り口はシャッターとし、開くと一気に室内が半屋外に変化する。土間空間には断熱材を設けない計画とする一方で、居室は気積をなるべく小さくし、断熱材と空調を計画した。組柱は周辺に応じて奥行き・高さ・角度を微妙に変え、その集まりによって出来上がる全体の形は、歪な四角形となっている。 竣工後しばらくしてから伺うと、組柱を埋め尽くすように資材や工具が運び込まれていた。組柱には手際よく棚が追加されていて、それらが納められていた。そして、ぽっかりと空いた中心に置かれたテーブルセットに腰かけると、働く事と住む事を同時に感じられる個性的なライフスタイルを感じた。華奢で繊細な構造体は、労働という日常に溶け込んでいた。