市街地と小高い山の間にある緑豊かな敷地に、36人の入所者の「住まいの場」と、通所者を含む「活動の場」をつくる計画である。 施主である社会福祉法人は市街地から離れた山の上で施設を運営していたが、障害を持った人も、皆と変わらぬ生活ができるべきであるという強い理念と「山の上から地域へ」という念願叶って、この新しい敷地での設計が開始された。 敷地は前面道路の交通量も少なく、背後を緑で覆われた低山の南斜面が見える気持ちの良い場所であり、ここには、明るくのびやかな建築が似合う様に思われた。 また、この建物は入所者の生活の場であるとともに、外部からの利用も想定されているため、「住まいの場」と「活動の場」の関係をいかにつくるかが重要だと考えた。 セキュリティ上、「住まいの場」と「活動の場」を分けることが望ましかったが、生活者と来訪者を完全に分離してしまうのは、クライアントの理念からも違うように感じた。 そこで、来訪者によって最も使われるであろう多目的室を敷地の奥に配置し、そこへ向かう動線によって東西に「住まいの場」と「活動の場」を分けてゾーニングしつつ、間に中庭を設ける構成とした。 この中庭が内部に光と風、または鳥の囀りなどをもたらすとともに、住まう人の雰囲気をゆるく伝えている。 「住まいの場」は色分けされた4つのユニットで構成され、それぞれに中庭に面した談話室をもち、光と開放感を与えている。1つのユニットは9つの個室で構成され、昼は通所者や地域の人も利用する食堂や多目的室へでかけ、夕方になると自分の家に帰るように談話室に帰ってきて寛ぐ。 そういった生活をイメージしている。