Kurenai Restaurant

ビルディングタイプ
レストラン
0
144
中華人民共和国 Shang Hai Shi

DATA

CREDIT

  • 設計
    YUHI STUDIO
  • 担当者
    森下悠也、畑秀幸、袁慧瑜
  • 施工
    上海云豹装饰设计装饰
  • 撮影
    YUHI STUDIO

中国上海で鮨屋の設計をすることになった。 設計をするにあたり鮨職人が調理するように内装設計をできないかと考えた。 鮨職人の創る一皿一皿には物語がある。食材の特徴、産地、季節を見極め、それらに合った最適の調理を行い、皿の上に美しく見立てる。このような鮨職人の一連の仕事は、日本文化の茶道や侘び寂びに通じるものがある。我々の設計手法も一つ一つの材料にこだわり空間と物語を創り、設計における問題を茶道と侘び寂びの概念によって解決していくこととした。 敷地は茂名路沿いの老房子が建ち並ぶ小区を改築したエリアで、店舗の真裏には地下鉄南京西路駅が隣接するため人通りが激しい。 店舗内部は50平米と小さく、外部空間は幅約1.5m、長さが約20mという一見変わった敷地である。この敷地条件から日本の茶室が連想された。外部の喧騒を半屋外空間で消化し精神を整えながら小さな茶室に入っていくという動線計画によって茶道の体現を試みた。 本計画の主要材料は、杉と松である。それらの木材を空間や場所を見極め、表面を焼き上げる。その際、焼き加減は、レア(20%)・ミディアム(50%)・ウェルダン(80%)の様に3種類用意した。経年変化等を考慮し外部空間は杉を用い、内部空間は松を用いた。 エントランス空間は、80%の黒光りした焼杉で覆われ、小さな庭のある日本風の半屋外露地である。のれんをくぐり細長い通路を通り、心を整えて店内に入っていくという茶道の精神を体現した。床材は敷石として花崗岩を配し、これは上海近郊の農村部で採れた廃材を利用することで侘び寂びの精神が現れる。ガラスブロックで造られた蹲踞(つくばい)は、ブロックの短手を正面にもってくるように配置することで日光が乱反射し、その反射光が空間をより豊かにすることを狙いとした。壁面の土壁はこのエリアの老房子がフランス租界であったことからスペイン産の粘質土を用いた。フランスにおける土壁はスペイン産のものが使われることが多い。そういった歴史を参照し風土に根差すために上海でもあえてスペイン産の粘質土を選定した。奥に配されたベンチは、45cm角の杉を同じく丸焼きにしたものである。入口の扉は20%の焼き加減で焼かれた松を用い、取手とフレームはコールテン鋼を用いた。このように本計画に用いた材料は人工的な着色を極限まで排除し、材料自体の自然に現れる色彩をもって全体が構成されている。 入口の扉を開けて室内に入ると赤い土壁仕上げの天井がある。赤い天井は角をフィレットしながら徐々に天井高を下げていくデザインとした。低い扉を潜ることでお互いの立場を分け隔てなくする茶室からの参照である。徐々に低くなる通路を抜けると赤いカウンターが見える。この赤いカウンターは、日本最古の赤とされる漆塗りを用いた。その際、傷や劣化を抑えるため表面には車の塗装に使う保護材を使用した。天井には黒い和紙貼りとし、一枚の和紙が浮遊して見えるよう端部の見つけを極限にまで細くした。手作業で作られたこの手揉み和紙は、黒い表現が豊かで繊細な表情をもつ日本鳥取産の因州和紙を用いた。カウンター奥の壁面は鮨職人の仕事・振舞いが美しく見えるよう、80%の焼き加減で焼かれた松を用いた。カウンター内の土壁の角部分を黒竹で抑える事で安全でありながら美しさと機能美を表現した。床材は墨入りコンクリートで土間のような表現とした。個室の扉は土壁とのバランスを考え20%の焼き加減で焼かれた松を用いた。個室は扉を開けると正面の開口部から中庭が見える。中庭に配された植物が漆塗のテーブルに反射し空間全体が特別で華やかなものとなった。天井はカウンターと同様に因州和紙を用いた。壁面はスペイン産の土壁、床材は松のフローリング敷きとした。 空間全体に行き渡る茶道と侘び寂びの精神と、一つ一つの空間や材料に対する職人的なこだわりの全てがシンクロナイズし、小さな店舗でありながらも質の良い豊かな空間へと創り上げることができた。

物件所在地