朝霞の家 / ずれとつらなり
所在地:埼玉県 設計:アソトシヒロデザインオフィス 用途:戸建住宅 竣工:2017年6月 工事種別:新築 採用商品:ジョリパット 家族構成は夫婦2人と子ども2人。これまで長く集合住宅生活をしてきた。「静かに安心して寛げる・・・でも庭があって開放的に暮らしたい」というのが設計依頼を受けたときの言葉だった。敷地は埼玉県朝霞市、最寄り駅から徒歩10分程の住宅密集地に位置する。建蔽率60%、容積率100%の第一種低層住居専用地域。敷地形状は間口10m奥行10mの整形地。北側の袋路は幅4mと狭く、敷地四方に隣家が迫り大開口を設けにくい。駐車場付き30坪2階建て住宅を求めると開放的な庭の確保が難しい敷地である。このような環境条件のもと、「閉鎖と開放が共存」する住宅のあり方を模索しようと考えた。 建物は街なみに対し、ずれた平行四辺形平面をそのまま立ち上げたヴォリュームとした。それにより近隣建物の外壁や窓との正対性を回避する。敷地に生じた2つの三角空地は近隣環境にゆとりを与え、光を通し、風を流す。隣地側の三角空地は奥庭として隣地との空隙となるとともに、その一辺をずれた外壁面と長く接することにより、実際よりも広がりを感じる場所となる。 内壁はずれた外壁と平行に配置し、建物ヴォリュームに呼応した平行四辺形をつらならせた。室配置は閉鎖的な室から開放的な室を道路側から奥庭側へ廊下を設けることなく、段階的に配置した。壁の直交性をなくし、相似形のつらなりとすることにより、多様に距離感やスケール感が変化する。リビングダイニング(以下LD)は1階から屋根までの吹抜とし、奥庭と大開口でつなぎ、奥庭とLDが1つの大きな庭として感じることができる。 開口は窓や扉、枠ともに方形ではなく、日常風景や流通規格からずれたアーチ形とした。古くからかまくらや洞窟などでみられるアーチ形は内と外をあいまいにつなぐ開口として機能する。アーチ開口を内外各所につらならすことにより、内や外、奥庭と1つとなったLD、各室の境界をあいまいにし、街なかにいるような豊かで多様な光や風、人、視線、雰囲気の流れ、広がりをつくり出す。 ずれた「平行四辺形とアーチ開口」のつらなりが、住宅密集地という住環境や日々の生活における様々な事象を豊かに相互補完する。この「ずれとつらなり」により、閉じながらも大らかで豊かに開放的に感じることができる住宅のあり方を示したいと考えた。