末富 青久 カフェスタンド
「AICA 施工例コンテスト 2023」優秀賞 設計:田中亮平/G ARCHITECTS STUDIO 所在地:京都府 用途:店舗 竣工:2022年9月 工事種別:リノベーション 採用商品:セラール セレント(厨房内壁) 京都の老舗和菓子屋さん「末富」が手掛ける新業態、「青久」のコーヒースタンド。敷地は、烏丸通り沿い。周囲にホテルやオフィスビルが建ち並ぶ交差点に建つ木造2階建てのさらに下屋部分。 店内の奥行はたった1mほど。あまりに奥行が浅いため、厨房と休憩スペースを前面道路に並行して配置したプランはすぐに決まった。 平面が半ば自動的に決まった一方で、設計のエネルギーの大半を立面に注いだ。私達は内装も外装も区別なく立面を検討することにし、銅の経年変化を化学的に操作することに注力した。 壁面に銅箔テープを貼り付けて、醤油と薬剤を使い分けて銅を酸化させた。それは外観を古都京都の老舗和菓子屋にふさわしい佇まいすると同時に、「末富ブルー」と呼ばれ70年以上も親しまれている、「末富」のコーポレートカラーである美しい水色を銅の錆ある緑青で表現したかったからである。 厨房内の壁面も通りからよく見えるため、外観と近い風合いとした。その一方でメンテナスしやすさも必要である。外壁は銅による赤褐色の錆、内壁は「セラール セレント」のラスティアイアン ダーク。風合いと機能を併せもつ素材としてぴったりだった。 審査員講評/石上 純也 ほぼ立面の計画のみで、既存の建物に寄生するかのように設計された小さな建築である。厳しい景観条例による制限があったとのことで、自然素材として認められた銅を外壁面に使用している。その特殊な立面と等価な存在として、厨房の壁面にセラールセレントのラスティアイアンダークを使用している。この厨房の壁面も外観の一部となり、立面の重要な要素となっている。自然素材をマニアックに使用する価値観と工業製品をクールに選択する価値観の共存が、この作品の不思議な存在感を強調していると感じた。