頓宮茶寮
所在地:滋賀県 設計:平居直設計スタジオ 用途:商業施設 竣工:2023年5月 工事種別:改築 採用商品:ジョリパット 鈴鹿峠をひかえた東海道の宿場町として栄えた土山で、150年以上にわたり茶問屋を営んできた丸安茶業の建物の一部を茶寮や焙煎所として改修したプロジェクトです。 家庭での日本茶消費が減少する中、お茶文化や地域のお茶産業の持続的な発展のため、気軽にお茶を楽しめ、日本茶の魅力を発信できる「場」をつくることを目指して計画がスタートしました。 日本茶に馴染みが無かった層に意識を向けながらも、日常使いをされていた地域の方々にも安心感をもってもらえるように、時を経たものと新しいものとのが調和し、懐かしさの中に新しさを感じられる状態になることを目指しました。 敷地内の工場に大量に積まれていた役目を終えた茶箱や笊を見たとき、これらの埃を取り払い再び光を当てることが何をおいても大事だと感じました。既存の内装やモノを活用するにあたり、手の加え方にグラデーションをつけています。例えば旧店舗で特徴的だった格天井は新しいプランに合うように一部を撤去しつつ拡張し、囲炉裏は既存のまま移設しつつ周りのベンチは抽象化、笊はズレ止めをつけてそのまま積層しただけの什器や、少し手を加えてミラーや棚として、茶箱はスチールと組み合わせて浮遊感を持たせた什器や、板を再構成してテーブルとして、、という具合です。このような操作を通じて、この場所にかつてあった風景と今とをつなぎとめようとしています。 プランニングとしては、元々物販・作業場・事務所機能があった1階に、これらの機能を保持しつつ飲食・焙煎所の機能を新たに加えています。将来の店舗拡張を見越し、店頭から敷地奥へと抜けるL字型のメイン動線を設け、それに沿って各機能を整理しました。 L字型の2辺はそれぞれ物販・飲食に対応し、その結節点には長年愛用された囲炉裏を移設しました。改修前の店舗ではいつも誰かがそこで寛いでいて、街道筋の店舗ならではの光景が見られていました。空間の要に再配置した囲炉裏のまわりで次世代のお茶文化が育まれることを期待しています。
